- ケース別の税金
- お役立ち情報
- 税金のQ&A ケーススタディ 各種資料 税金の手引きデジタルブックはこちら
ケーススタディ
7.固定資産の交換
税務上固定資産の交換は譲渡として扱われ、譲渡所得税の課税の対象になります。しかし一定の要件を満たす固定資産の交換は「固定資産の交換の特例」により課税がないものとして扱われます。個人、法人共に同一の特例があります。また、特例は交換を行ったものが任意に特例の適用を受けることができるため、一方の者が特例を受けなくてももう一方の者が適用を受けられないということはありません。また交換の時の各資産の時価については、恣意的な価格でなければ主観的な時価、すなわち両者が合意した時価によります。
(「4.固定資産の交換の特例」もあわせてご参照ください。)
(1)交換の条件
下記のA土地とB土地建物の交換
A個人 | ||
A |
A氏依頼鑑定士の評価額 | 18,000万円 |
相続税評価額 | 14,400万円 | |
固定資産税評価額 | 12,600万円 | |
鑑定士評価額合計 | 18,000万円 |
B 社 | ||
B |
B社依頼鑑定士の評価額 | 20,000万円 |
相続税評価額 | 16,000万円 | |
固定資産税評価額 | 14,000万円 | |
B |
B社依頼鑑定士の評価額 | 5,000万円 |
相続税評価額 | 1,000万円 | |
固定資産税評価額 | 1,000万円 | |
鑑定士評価額合計 | 25,000万円 |
- A個人は単純に売却を希望しています。
- B社はB社社宅の簿価が少額なため法人税の課税を避けたいと考えています。
- B社社宅を売却してA土地を購入すると、売却に伴う法人税を負担した残額で購入することになるため税負担が重くなります。
- B社はA個人の土地がB社の本社所在地の隣接地であるため是非とも欲しい土地です。
- A個人はB社の強い希望があるためなるべく高く売りたいと考えています。
- 両者とも所有期間は長期に及んでいます(A個人30年、B社46年)。
- B社はB社社宅の土地建物とA土地の交換を申し出ました。
- B社社宅にはC氏という買い手が25,000万円で既に購入の申し出があります。
- そこでA氏は、A土地とB社社宅との交換後B社社宅用地をC氏に売却することにしました。
- そのため両者は次の価格で合意しました。
A個人 | ||
土 |
A氏の売却希望価格 | 25,000万円 |
B社の購入希望価格 | 25,000万円 |
B 社 | ||
土 |
B社依頼鑑定士の評価額 | 20,000万円 |
建 |
B社依頼鑑定士の評価額 | 5,000万円 |
鑑定士評価額合計 | 25,000万円 |
(2)問題点の抽出
■時価の判断は?
A土地は鑑定士の評価額が18,000万円、B社の希望価格が25,000万円である。この場合、B社土地の鑑定額は20,000万円、建物5,000万円であるため、客観的時価の差額は7,000万円である。いずれか大きい方(25,000万円)の20%を超えるが?
〔所得税基本通達58-12〕
固定資産の交換があった場合において、交換当事者間において合意されたその資産の価額が、交換するに至った事情に照らし合理的に算定されていると認められるものであるときは、その合意された価額が通常の取引価額と異なるときであっても、所得税法 58条の規定の適用上、その資産の価額はその合意したところによるものとする。
すなわち両者の合意が時価であるということになります。
■ 建物付き土地と土地の交換は可能か?
建物部分は交換差金となります。従ってこの交換は
A土地 | B社社宅 | |
土地 | 土地 | 交換差金 |
25,000万円 | 20,000万円 | 5,000万円 |
と同様です。
5,000万円 ≦ 25,000万円 × 20% で要件は満たすことになります。
A氏は交換の特例をとる場合には交換差金として受け取る5,000万円に譲渡所得税が生じます。
■A氏はB社社宅を交換後すぐ売却するが、同一用途に供するという要件に反するのでは?
交換の特例では「交換取得資産は、交換譲渡資産の譲渡直前の用途と同一の用途に供すること。」との要件があります。しかし、A氏はB社社宅を交換後すぐC氏に売却します。B社は交換後同一用途に供します。すなわちA氏は交換の特例をとる意思はありません。B社は、同一用途に供する要件は満たしています。交換の当事者のいずれかが同一用途に供して、もう一方の当事者が交換の特例をとらなくても、この特例はその者ごとに判定することになります。
■法人と個人の交換は可能か?
所得税法58条では「居住者が各年において、1年以上有していた固定資産を他の者が1年以上有していた固定資産と交換し…」とあります。相手を個人と限定してはいません。
一方法人税法50条でも「内国法人が、各事業年度において、…それぞれ他の者が1年以上有していた固定資産で…」とあります。これも同様です。
解 説
この交換で、B社は「固定資産の交換の特例」の要件を満たします。A氏は交換の特例はとらず一般譲渡とします。この特例は隣接地の買収やいわゆる開発用土地の買収などにも用いられます。しかし、譲渡所得税・住民税の節税になっても不動産取得税や登録免許税は通常の税率で課税されるので、全ての税コストを計算してから実行してください。
- 企画・発行
-
三井不動産リアルティ株式会社
東京都港区霞が関 3-2-5 霞が関ビルディング
https://www.mf-realty.jp/
- 監修
-
東京シティ税理士事務所
税理士 山端 康幸
https://www.tokyocity.co.jp/