- ケース別の税金
- お役立ち情報
- 税金のQ&A ケーススタディ 各種資料 税金の手引きデジタルブックはこちら
相続税・贈与税について
(事業用不動産の相続税・贈与税)
4.相続時精算課税制度(相続税・贈与税の一体化措置)
相続時精算課税制度の仕組みとあらまし
贈与税と相続税を一体化させた課税方式(贈与の際に納めた贈与税は、相続の際に納める相続税額から差し引くことができる課税方式)で、不動産取得に限らず親から複数年で贈与された財産が2,500万円までは課税されず、2,500万円を超えた場合は一律20%の税率で課税されるというものです。この場合110万円の基礎控除はありません。但し、2023年(令和5年) 度改正により、2024年(令和6年)1月1日以後の贈与については、別枠で年間110万円を控除できることとなりました。また、本制度の贈与者(父母・祖父母)以外からの贈与財産には110万円の基礎控除を控除し、通常の贈与税率を乗じて計算することになります。
本制度を選択した受贈者(子・孫)は贈与者(父母・祖父母)の相続時に、贈与財産を相続財産に加算して現行の相続税の課税方式で相続税を計算し、本制度で既に支払った贈与税があればそれを差し引き、控除しきれない贈与税は還付されます。なお、相続税の課税価格に加算する贈与財産の価格は、贈与時の時価とします。
本制度は、2,500万円の非課税枠の利用でまとまった財産を早期に生前贈与できる点がメリットです。
適用要件
非課税枠 |
2,500万円 |
贈与者 及び 受贈者 |
適用対象となる贈与者は60歳以上の父母・祖父母 ※年齢は贈与のあった年の1月1日で判定 ※受贈者である子・孫がそれぞれ、贈与者である父母・祖父母ごとに選択 |
贈与財産 | 贈与財産は不動産の取得のための金銭に限らず、不動産自体、借入金の免除、単純な金銭の贈与など、どのような財産であっても可能であり、贈与する財産の価格、贈与回数にも制限がない |
申告要件 | 税金が生じなくても贈与の翌年2月1日より3月15日までに税務署長にその旨、上記の選択を贈与税の申告書に添付して行う(一度選択すると撤回できない) |
< 計 算 例 >
親Aから子Bへ4年間で総額4,440万円贈与があり、相続時精算課税制度を選択した場合
2024年 (令和6年) |
2025年 (令和7年) |
2026年 |
2027年 (令和9年) |
合計 | |
①贈与額 | 1,110万円 | 1,110万円 | 1,110万円 | 1,110万円 | 4,440万円 |
②基礎控除額 | 110万円 | 110万円 | 110万円 | 110万円 | 440万円 |
③贈与累積対象額(①-②) | 1,000万円 | 1,000万円 | 1,000万円 | 1,000万円 | 4,000万円 |
④特別控除額 | 1,000万円 | 1,000万円 | 500万円 | ー | 2,500万円 |
⑤贈与税率 | 20% | 20% | 20% | 20% | ─ |
贈与税 {(③ー④)× ⑤ } | 0円 | 0円 | 100万円 | 200万円 | 300万円 |
贈与税額累計300万円
さらに2027年(令和9年)に親Aから子B(相続人がBだけである)へ、遺産総額5,000万円の相続が発生した場合の相続税
課税価格 |
税 額 詳細は→こちらをご参照ください。 |
||||||
※相続税算出時は、生前贈与額4,000万円を課税価格に入れて計算します。 |
(9,000万円 - 3,600万円※)× 30% - 700万円 = 相続税920万円 ※相続税の基礎控除額3,600万円 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数(子Bのみ) ただし、相続税額から既に支払った贈与税額を 差し引くことができるので、納付する相続税は 次のとおりとなります。 920万円 - 300万円 = 620万円 |
相続時精算課税制度の活用例
■アパートの建物のみの贈与
親から子へアパートの建物の贈与が行われた場合には、賃貸収入が子に帰属することになるので、親の相続財産の増加を防ぎ相続税対策になると同時に、親に集中している収入が分散されることから所得税の節税効果もあります。また子がその収入を貯めることで相続税の納税資金対策になります。建物のみの贈与としているのは、「建物の相続税評価額 = 建物の固定資産税評価額 ×(1 - 0.3)」であり、贈与税額を考慮に入れると土地がない方が容易に収益物件の贈与が可能になるからです。
■値上がりしそうな不動産の贈与
相続時精算課税制度の適用を受けた贈与財産は、相続税を計算するとき贈与時の時価で計算されます。従って、贈与時点よりも将来値上がりが見込まれる不動産の贈与は相続税の節税に繋がります。
注意点
■負担付贈与に注意
アパートの建物を相続時精算課税制度を利用して贈与する場合の注意です。アパートの敷金を預かっている状態で、その敷金の返還義務を継承してアパートの建物の贈与を受けると、敷金の返還義務という債務負担付での贈与となります。この場合、贈与の額は時価とされると共に贈与者にも譲渡所得税の課税問題が生ずることもあります。敷金は現金で贈与しておく必要があります。
■小規模宅地の特例は適用できない
相続時精算課税制度を利用して、アパートの建物とその敷地を贈与する場合、敷地については小規模宅地の特例は適用できません。ただし、貸家建付地の評価減は適用することができます。
■物納財産とすることはできない
相続時精算課税制度を利用して贈与された不動産は、その後贈与者に相続が生じた場合、その不動産は物納財産とすることはできません。
- 企画・発行
-
三井不動産リアルティ株式会社
東京都港区霞が関 3-2-5 霞が関ビルディング
https://www.mf-realty.jp/
- 監修
-
東京シティ税理士事務所
税理士 山端 康幸
https://www.tokyocity.co.jp/