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相続税・贈与税について
(事業用不動産の相続税・贈与税)
1.相続税の仕組みと計算
相続税とは
相続税は、財産を相続又は遺贈により取得した人に対して課税される税金です。個人間の資産格差の調整のため、一定金額を超える財産を取得した場合には、その超える金額に対して相続税が課税されます。被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内に被相続人の住所地の所轄税務署に申告し納税することになっています。相続税の大まかな流れについては下記スケジュールをご参照ください。
〈スケジュール〉
相続人の確定と 財産債務の調査 |
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相続放棄・限定承認 相続開始を知った日から |
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所得税の準確定申告・納付 相続開始を知った日の翌日から |
不動産所得や事業所得などの所得税の確定申告は、通常、翌年3月15日までに行いますが、個人が死亡した場合には、被相続人のその年の 1 月 1 日から死亡の日までの期間の所得について相続人が確定申告(準確定申告といいます)しなければなりません。 | ||
相続税の申告・納付 相続開始を知った日の翌日から |
分割が確定していないと適用できない特例があるため、この期限までに遺産分割協議が相続人間で整っていることが望まれます。現金納付する場合にはこの期限までに納税しなければなりません。延納や物納もこの期限までに申請書を提出し許可を受けなければなりません。 | ||
遺留分の侵害額請求 相続開始及び遺留分を |
遺言によって遺留分未満の財産しかもらえなかった法定相続人は、遺留分を侵した相手に対して1年以内に「遺留分の侵害額請求」を行うことができます。なお兄弟姉妹には遺留分はありません。 〈遺留分の割合〉
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相続税の特例適用のための 相続開始を知った日の翌日から |
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■法定相続人・法定相続分
法定相続人は、次のように配偶者と一定の血族からなります。まず、配偶者は必ず相続人となり、配偶者と血族相続人は共同して相続します。また、順位の異なる血族相続人同士が共同して相続することはなく、あくまでも次の順位で相続人となります。故人の子と故人の親や、故人の親と故人の兄弟姉妹が共同相続人になることはありません。
配偶者 |
+ |
血族相続人 | 内 容 | |
第1順位 | 子供・孫(直系卑属) | 子供がすでに死亡している場合、孫が相続人となります。 | ||
第2順位 | 父母・祖父母(直系尊属) | 子・孫がいない場合、相続人となります。 父母がいない場合、祖父母が相続人となります。 |
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第3順位 | 兄弟姉妹 | 子・孫、親共にいない場合、相続人となります。 兄弟姉妹がすでに死亡している場合、その子が相続人となります。 |
法定相続人 | 法定相続分 | ||
配偶者+子供(又は孫) | 配偶者:1/2 | 子供(孫):1/2 | 相続人が複数の場合には その人数で按分します。 (例)配偶者の他に子供が2人いる場合 |
配偶者+父母(又は祖父母) | 配偶者:2/3 | 父母(祖父母):1/3 | |
配偶者+兄弟姉妹 | 配偶者:3/4 | 兄弟姉妹:1/4 |
■相続財産
相続等により取得した財産は相続税の課税対象となります。この相続等により取得した財産は「本来の財産」と呼ばれます。具体的に言えば、土地、建物、現預金、有価証券などです。これに対し、被相続人の死亡に起因して財産を取得したのと同様の経済効果が得られる財産を「みなし相続財産」と呼んでいます。みなし相続財産には死亡生命保険金・死亡退職金等があります。
また、相続開始前7年(2023年[令和5年]以前の贈与は3年)以内(※)に被相続人から贈与により取得した財産や、相続時精算課税制度を適用して被相続人から贈与により取得した財産がある場合にはその贈与財産を相続財産に加算することになります。
■相続時精算課税制度との関連
相続時精算課税制度を選択した受贈者(子・孫)は、贈与者(父母・祖父母)の相続時に贈与財産を相続財産に加算して相続税を計算し、相続時精算課税制度で既に支払った贈与税があればそれを差し引き、控除しきれない贈与税は還付されます。なお、相続税の課税価格に加算する贈与財産の価格は贈与時の時価とします。
■非課税相続財産
相続財産の中には、その財産の性質、社会的見地、国民感情等から相続税を課税することが好ましくないとして相続税の課税対象としない非課税財産が設けられています。具体的には、香典、花輪代、墓石などがあります。また、今後の生活保証という面から被相続人の死亡に伴う死亡生命保険金、死亡退職金などについては一定の金額を限度として非課税とされています。
■債務・葬式費用
相続人は被相続人からプラスの財産だけでなく債務も承継することとなります。また、相続人等が被相続人の葬式費用を負担した場合には、その費用を被相続人の財産から負担したものと考えます。したがって、債務や葬式費用の金額を、取得した財産の価額から控除して相続税額を計算することになります。
※生前贈与加算(2023年[令和5年]度改正)
①加算期間 | 相続又は遺贈により財産を取得した者が、当該相続の開始前7年以内に被相続人から贈与により財産を取得したときは、当該財産の価額は相続税の課税価格に加算する |
②加 算 額 | ①により加算される財産のうち、相続開始前3年以内に贈与により取得した財産以外の財産については、加算する額はその贈与により取得した財産の合計額から100万円を控除した金額とする |
(注)上記の改正は2024年(令和6年)1月1日以後に行う贈与により取得する財産に係る相続税につき適用する
相続税の計算の流れ
※相続税の速算表
法定相続人の取得金額 | 税 率 | 速算表控除額 |
1,000万円以下 | 10% | ─ |
3,000万円以下 | 15% |
50万円 |
5,000万円以下 | 20% |
200万円 |
1億円以下 | 30% |
700万円 |
2億円以下 | 40% |
1,700万円 |
3億円以下 | 45% |
2,700万円 |
6億円以下 | 50% |
4,200万円 |
6億円超 | 55% |
7,200万円 |
< 計 算 例 >
2024年(令和6年)に夫が死亡し、妻と子供2人(成人)が3億円の財産を相続しました。この他、ローンの残額が5,000万円あり、葬式費用には200万円かかりました。なお、遺産は妻が5分の2を取得し、残りを子供に等分に配分しました。相続税はいくらになりますか。
「相続税の計算の流れ」に沿って算出します。
Step1課税価格の合計額の計算
財産 |
負債 |
葬式費用 |
課税価格合計額 |
3億円 | -(5,000万円 | + 200万円) | = 2億4,800万円 |
Step2課税遺産総額の計算
課税価格合計額 |
基礎控除 |
課税遺産総額 |
2億4,800万円 | - 4,800万円 | = 2億円 |
基礎控除 3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円
Step3相続税の総額の計算
①課税遺産総額を法定相続分で按分する
課税遺産総額 |
割合 |
法定相続人の取得金額 |
|
妻 | 2億円 | × 1/2 | = 1億円 |
子A | 2億円 | × 1/4 | = 5,000万円 |
子B | 2億円 | × 1/4 | = 5,000万円 |
②法定相続人ごとに算出した相続税を合計し総額を求める
法定相続人の取得金額 |
税率 |
控除額 |
相続税 |
|
妻 | 1億円 | × 30% | - 700万円 = | 2,300万円 |
子A | 5,000万円 | × 20% | - 200万円 = | 800万円 |
子B | 5,000万円 | × 20% | - 200万円 = | 800万円 |
合 計 | 3,900万円 |
Step4各相続人等の算出税額の計算
相続税の総額を各相続人に按分する
妻 | 3,900万円 | × 2/5 = | 1,560万円 |
子A | 3,900万円 | × 3/10 = | 1,170万円 |
子B | 3,900万円 | × 3/10 = | 1,170万円 |
合 計 | 3,900万円 |
Step5各相続人等の納付税額の計算
配偶者の税額軽減
配偶者は、法定相続分と1億6,000万円のいずれか多い額まで相続しても、相続税はかかりません。
①配偶者の課税価格(取得割合分)
2億4,800万円 × 2/5 = 9,920万円
②配偶者の法定相続分
課税価格合計額×法定相続分
2億4,800万円 × 1/2 = 1億2,400万円
①が②又は1億6,000万円以下なので税負担なし
各相続人の納付税額
妻 | 0円 | ||
子A |
Step4 |
より | = 1,170万円 |
子B |
Step4 |
より | = 1,170万円 |
合 計 | 2,340万円 |
※最終の納付税額の合計額は、2,340万円で、債務控除後の課税価格合計額2億4,800万円の約9.4%相当となります。
- 企画・発行
-
三井不動産リアルティ株式会社
東京都港区霞が関 3-2-5 霞が関ビルディング
https://www.mf-realty.jp/
- 監修
-
東京シティ税理士事務所
税理士 山端 康幸
https://www.tokyocity.co.jp/