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保有しているとき(不動産所得等)の税金
不動産所得の計算
不動産所得の計算方法
不動産所得の金額=収入金額-必要経費
収入金額
◆収入金額に含まれるもの
- 家賃・地代・権利金・更新料・礼金・共益費などの名目で受け取る電気代、水道代や掃除代など
- 敷金・保証金のうち、返還を要しないもの(退去時に返還する分は収入金額に含まれません)
◆収入金額の計上時期
不動産所得の収入金額は、賃貸借の契約などによってその年の1月1日から12月31日までの間に収入すべき金額として確定した家賃、地代、賃貸料などの金額です。つまり、家賃が未収のものでも収入金額に含めなければいけません。
区 分 | 収入計上時期 | |
契約、慣習により支払日が定められているもの | 定められた支払日 | |
支払日が定められて いないもの |
請求があったときに支払うべきもの | 請求の日 |
その他のもの | 実際に支払を受けた日 | |
礼金・権利金・更新料等 | 貸付物件の引渡しを要するもの | 引渡しのあった日(契約の効力発生日でも可) |
引渡しを要しないもの | 契約の効力発生日 | |
当初より返還を要しない敷金・保証金 | 返還を要しないことが確定した日 |
必要経費
不動産賃貸に伴って発生した事業上の支出のうち一定のものは、必要経費として収入金額から差し引くことができます。
必要経費として認められるもの | 必要経費として認められないもの |
|
|
必要経費と取得価額
賃貸用不動産を購入した際は、本体価格のほかに様々な支出が伴いますが、その支出はその年度での必要経費としてよいものと、不動産の取得価額に含めるべきものがあります。購入時に支払う仲介手数料などの土地と建物双方に係る支出については、それぞれの取得価額の比率で按分します。そのうち建物の取得価額に含めるべき支出については、毎年の減価償却により必要経費となります。
必要経費とするもの | 取得価額に含めるべきもの |
|
〔土地〕
〔建物〕
〔建物附属設備〕
〔土地・建物に配分〕
|
減価償却費
建物やその附属する設備などの資産は、毎年使用することによって物理的にも経済的にもその価値が減少します。その価値の減少は、毎年の収入獲得に貢献しているわけですから、このような資産を取得するための支出は、将来の収入を生みだすための費用の前払いと考えられます。したがって、建物などの資産を購入するために支払った金額はその支払った時だけの経費とせず、その資産を有効に業務の用に使用できる期間(耐用年数)の経費として配分しなければなりません。この経費を配分する手続を減価償却といいます。
減価償却費は、税法上定められた方法に従って金額を算定し、その耐用年数にわたってそれぞれの年の必要経費とします。ただし、購入代金が10万円未満の少額の減価償却資産については、全額その支払った年の必要経費として構いません。また、青色申告の承認を受けている場合、年額300万円を限度に購入代金が30万円未満の減価償却資産の購入代金を支払った年の必要経費とすることができます。
◆減価償却すべき資産か
減価償却すべき資産 | 減価償却の対象としない資産 |
|
|
◆減価償却の方法
認められている減価償却の方法は次の通りです。
定額法=毎年の減価償却費が定額となるように計算する方法
定率法=初期に多額の減価償却費を計上し、その後年々減価償却費が減少する方法
個人の場合、原則的には定額法により計算を行いますが、「減価償却資産の償却方法の届出書」(注)を提出することにより定率法を選定することができます。
ただし、建物・建物附属設備・構築物については定額法で計算しなければならないと定められています。
(注)その年分の確定申告期限までに税務署に届け出る必要があります。
◆減価償却費の計算
減価償却費は次のように計算します。
償却方法 |
減価償却費の計算方法 |
定額法 | 取得価額 × 法定耐用年数に応じた定額法の償却率 |
定率法 |
①A≧「償却保証額」の場合・・・A ②A<「償却保証額」の場合・・・B A:前年末時点の未償却残高 × 法定耐用年数に応じた定率法の償却率 B:「A<償却保証額」となった年の前年末時点の未償却残高 × 法定耐用年数に応じた改定償却率 ※償却保証額:取得価額 × 法定耐用年数に応じた償却保証率 |
※帳簿価額が1円になるまで償却することができます。
※年の中途で新たに事業の用に供した資産については、事業供用日から年末までの月数分を計上します。
〈法定耐用年数・償却率表〉(住宅用)
構造・用途 |
法定 |
償 却 率 |
||||
定額法(注1) |
定率法(注2) |
改定償却率 |
償却保証率 |
|||
建物(注3) |
木造 |
22年 |
0.046 |
― |
― |
― |
木骨モルタル造 |
20年 |
0.050 |
― |
― |
― |
|
鉄骨鉄筋コンクリート造 |
47年 |
0.022 |
― |
― |
― |
|
金属造
|
34年 27年 19年 |
0.030 0.038 0.053 |
― |
― |
― |
|
建物附属設備(注4) |
電気設備、 |
15年 |
0.067 | 0.133 | 0.143 | 0.04565 |
昇降機設備
|
17年 15年 |
0.059 0.067 |
0.118 0.133 |
0.125 0.143 |
0.04038 0.04565 |
|
消火、排煙、災害報知設備及び |
8年 |
0.125 | 0.250 | 0.334 | 0.07909 | |
構築物(注4) |
アスファルト舗装費用 |
10年 |
0.100 | 0.200 | 0.250 | 0.06552 |
塀・外構
|
30年 15年 25年 |
0.034 0.067 0.040 |
0.067 0.133 0.080 |
0.072 0.143 0.084 |
0.02366 0.04565 0.02841 |
|
器具及び備品 |
冷暖房用機器・電気冷蔵庫 |
6年 |
0.167 |
0.333 | 0.334 | 0.09911 |
カーテン・寝具等 |
3年 | 0.334 | 0.667 | 1.000 | 0.11089 | |
その他 |
水道施設利用権 |
15年 |
0.067 |
― |
― |
― |
(注1)2007年(平成19年)3月31日以前に取得した減価償却資産については旧定額法の償却率で計算されます。
(注2)2007年(平成19年)3月31日以前に取得した減価償却資産は旧定率法の償却率、2007年(平成19年)4月1日から2012年(平成24年)3月31日までに取得した減価償却資産については、旧償却率で計算されます。
(注3)1998年(平成10年)4月1日以後に取得した場合は、定率法は選択できず、定額法のみの適用となります。
(注4)2016年(平成28年)4月1日以後に取得した場合は、定率法は選択できず、定額法のみの適用となります。
◆中古資産を取得した場合の取り扱い
中古資産を取得した場合には、耐用年数を合理的に見積もることとされていますが、以下に説明する簡便法により計算した耐用年数を使用することができます。
〈法定耐用年数を全部経過したもの〉
(法定耐用年数)×20/100
〈法定耐用年数の一部を経過したもの〉
(法定耐用年数-経過年数)+(経過年数)×20/100
※1年未満の端数は切り捨て、上記の計算による年数が2年未満のときは2年とします。
<簡便法による残存耐用年数の計算例>
法定耐用年数22年の資産を3年8ヶ月経過後に取得した。
(22年-3年8ヶ月)+3年8ヶ月×20%=(264月-44月)+44月×0.2=228.8月=19.06年→19年
※1年未満の端数の切り捨ては最後に行います。
〈減価償却費の計算例〉
〔条件〕 | 資 産 金属製看板 取得時期 2024年(令和6年)3月1日 購入金額 10,000,000円 耐用年数 10年 |
定額法の償却率:0.100 定率法の償却率:0.200 改定償却率 :0.250 償却保証率 :0.06552 |
〈定額法〉
① 取得価額に定額法の償却率を乗じた金額が減価償却費となります(2024年[令和6年]~2034年[令和16年]分)。
なお、事業供用年(2024年[令和6年])は供用日からの月数分(10月/12月)を計算します。
② 償却最終年分は①の償却額がその年の期首簿価を超えてしまうため、期首簿価から備忘価額1円を控除した金額を減価償却費とします(2034年[令和16年]分)。
年 分 | 期首簿価 | 定額法償却額の計算 | 減価償却費 | ||||||||
2024年(令和6年) |
― |
|
833,333円 |
||||||||
2025年(令和7年)~ 2033年(令和15年) |
・・・ |
|
1,000,000円 |
||||||||
2034年(令和16年) | 166,667円 |
|
166,666円 |
〈定率法〉
① 償却保証額(1年間の最低限の償却額を保証する金額)を計算します。
取得価額 | 償却保証率 | |||
償却保証額= | 10,000,000円 | × | 0.06552 | =655,200円(※) |
② 定率法償却率による償却額を計算します。
③ ②の償却額が①の償却保証額以上であれば②の金額が減価償却費となります(2024年[令和6年]~2029年[令和11年]分)。
なお、事業供用年(2024年[令和6年])は供用日からの月数分(10月/12月)を計算します。
④ ②の償却額が①の償却保証額を下回った場合には改定償却率による償却額が減価償却費となります(2030年[令和12年]~2032年[令和14年]分)。
⑤ 償却最終年分は④の改定償却額がその年の期首簿価を超えてしまうため、期首簿価から備忘価額1円を控除した金額を減価償却費とします(2033年[令和15年]分)。
年 分 | 期首簿価 | 定額法償却額の計算 | 減価償却費 | 改訂償却額の計算 | 減価償却費 | |||||||||||||||
2024年(令和6年) |
― |
|
(※) 655,200円 |
1,666,666円 |
||||||||||||||||
2025年(令和7年) |
8,333,334円 |
|
1,666,666円 | |||||||||||||||||
2026年(令和8年) |
6,666,668円 |
|
1,333,333円 |
|||||||||||||||||
2027年(令和9年) |
5,333,335円 |
|
1,066,667円 |
|||||||||||||||||
2028年(令和10年) |
4,266,668円 |
|
853,333円 |
|||||||||||||||||
2029年(令和11年) |
3,413,335円 |
|
682,667円 |
|||||||||||||||||
2030年(令和12年) |
2,730,668円 |
|
|
682,667円 |
||||||||||||||||
2031年(令和13年) |
2,048,001円 |
|
|
682,667円 |
||||||||||||||||
2032年(令和14年) |
1,365,334円 |
|
|
682,667円 |
||||||||||||||||
2033年(令和15年) |
682,667円 |
|
|
682,666円 |
修繕費の判定
貸付けなどの事業の用に使用している建物、建物附属設備などの資産の修繕費で通常の維持管理や修理のために支出されるものは必要経費になります。一般に修繕費といわれるものでも資産の使用可能期間を延長させたり、資産の価値を増加させたりする部分の支出は、所得税法上、資本的支出になります。資本的支出については、支出時の必要経費とせず、取得価額に含めます。
このような修繕費と資本的支出の区別は、修繕や改良という名目によるのではなく、その実質によって判定します。
20万円未満であるものを除き、次のような支出は原則として資本的支出になります。
- 建物の避難階段の取付けなど、物理的に付け加えた部分の金額
- 用途変更のための模様替えなど、改造又は改装に直接要した金額
- 機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合で、その取替えに要した金額のうち通常の取替えにかかる金額を超える部分の金額
なお、上記の基準に照らしてもその修理等のための支出が修繕費か資本的支出か明らかでない場合には、次のいずれかに該当していれば、修繕費として認められます。
- その金額が60万円に満たない場合
- その金額が修理等した資産の前年末における取得価額のおおむね10%相当額以下である場合
※「前年末における取得価額」とは、原則前年12月31日に有する、固定資産の最初の取得価額に過去の資本的支出額を加算したものです。
青色申告
不動産所得などが発生する人は、一定の要件を満たす帳簿書類を備え付け、税務署に青色申告の承認申請をして承認された場合は、青色申告書による申告を行うことができます。この青色申告者については、税務上各種の特典が認められています。
◆青色申告の承認申請手続き
新たに青色申告をしようとする場合は、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を所轄の税務署長に提出してください。
なお、その年の1月16日以後に事業を開始した人については、事業開始の日から2ヶ月以内に申請すればよいことになっています。
◆一定の要件を満たす帳簿書類とは
青色申告者は、年末に貸借対照表と損益計算書を作成することができるような正規の簿記の原則に従った記帳により帳簿を作成することが原則ですが、事業的規模以外の場合には、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳のような簡易な帳簿を備え付けるだけでもよいことになっています。これらの帳簿および書類などは、原則として7年間保存しなければなりません。
◆青色申告の主な特典
〈青色申告特別控除〉
以下の要件を満たしていれば不動産所得から55万円、65万円又は10万円を控除することができる制度です。
55万円の控除が受けられるための要件
- 事業的規模(→こちらをご参照ください)により不動産の貸付けを行っていること
- 正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により取引を記帳していること
- 確定申告書に貸借対照表・損益計算書を添付して、申告期限内に提出すること
65万円の控除が受けられるための要件
- 55万円の控除が受けられるための要件に該当していること
- 申告期限内に電子申告(税理士が代理で行う電子申告を含む)により提出すること又は電子帳簿の保存を行っていること。
〈青色事業専従者給与〉事業的規模(→こちらをご参照ください)で不動産の貸付けを行っている場合に限ります。
青色申告者と生計を一にしている配偶者その他の親族のうち、年齢が15歳以上で、その青色申告者の事業に専ら従事している人(青色事業専従者)に支払った給与は、事前に提出した「青色事業専従者給与に関する届出書」に記載された金額の範囲内で労務の対価として適正な金額(注)であれば、必要経費として認められます。なお、青色事業専従者として給与の支払いを受ける人は、配偶者控除や扶養控除の対象とはされません。
(注)労務の金額として適正な金額とは次の状況で判断されます。
- ①専従者の労務に従事した期間・労務の性質及びその程度
- ②事業に従事する他の使用人の給与及び同種同規模の事業に専従する者の給与の状況
- ③事業の種類・規模及び収益の状況
〈純損失の繰越〉
不動産所得が赤字になり純損失が生じたときには、その損失額を翌年以後3年間にわたって、各年分の所得から差し引くことができるというものです。
〈不動産所得の計算例〉
以下の条件で賃貸用マンションを購入し、賃貸します。以下に示す収入と経費が発生すると見込まれます。この場合、不動産所得の金額はいくらになりますか?
また、その他に給与所得が800万円あります。年間の所得金額はいくらになりますか?
[ 条件 ] |
購入金額 5,000万円 (土地3,000万円、建物(鉄骨鉄筋コンクリート造)2,000万円と仮定) 借入金 2,000万円 (金利は年3.2%・借入金残高も一年間変動しないものと仮定) |
|||||||||||||||||||||
[ 収入 ] |
賃料は、月額20万円と仮定(12ヶ月とする) 敷金・礼金2ヶ月分を受け入れる(敷金は退去時に返還する) |
|||||||||||||||||||||
[ 経費 ] |
管理組合に支払う管理費は、月額2万円と仮定 不動産業者に対する管理手数料は、月額賃料の5%と仮定 固定資産税・登記費用に25万円かかると仮定 減価償却費は一年分満額と仮定 そのほかの経費として15万円かかると仮定 |
|||||||||||||||||||||
[不動産所得の金額] |
96万円(収入金額(280万円)― 必要経費(184万円)) |
|||||||||||||||||||||
[年間の所得金額] |
年間の総所得金額896万円(不動産所得(96万円)+ 給与所得(800万円)) |
損益通算
損益通算とは、所得の金額の計算上、不動産所得などについて生じた損失について他の所得(給与所得など)と相殺することをいいます。つまり、その損失分だけ所得金額を圧縮することができ、納税額を減らす効果をもたらします。
ただし、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した金額のうち、土地等を取得するために要した借入金の利息の額がある場合には、その損失額のうちその土地等を取得するために要した借入金の利息に相当する額は損益通算できません。
※→こちらもあわせてご参照ください。
国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例
(1)個人が2021年(令和3年)以後の各年において、国外中古建物を賃貸し不動産所得を有する場合に、その年分の不動産所得の金額の計算上国外不動産所得の損失の金額があるときは、その国外中古建物の減価償却費に相当する金額で耐用年数につき次の①②の方法(いわゆる「簡便法」)により計算したものは生じなかったものとみなされます。
① 法定耐用年数の20%
② (法定耐用年数-経過年数)+経過年数の20%
(2)(1)の適用を受けた国外中古建物を譲渡した場合の譲渡所得の金額の計算上、(1)により生じなかったものとみなされた減価償却費に相当する金額は、取得費から控除しないこととなります。
- 企画・発行
-
三井不動産リアルティ株式会社
東京都港区霞が関 3-2-5 霞が関ビルディング
https://www.mf-realty.jp/
- 監修
-
東京シティ税理士事務所
税理士 山端 康幸
https://www.tokyocity.co.jp/