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リハウス
ストーリー
Vol.1

Rehouse Story(リハウスストーリー) Vol.1Rehouse Story(リハウスストーリー) Vol.1

Rehouse Story Vol.1

ある雪の日。物腰の柔らかい、上品な80代のご夫婦と出会いました。「どうも、お世話になります」。丁寧にお辞儀をされるお二人に、私はこちらこそと恐縮しつつ、素敵なご夫婦だなと感じたのを覚えています。息子さんの家の近くへ引っ越すため、ご自宅を売りたいとのお話でした。「建物はね、もう35年も経ってますから。壊してしまってかまいません。その代わり…」と、ご夫婦は、売る時の条件を二つ挙げました。それをお聞きした当初、私は正直「難しい条件だぞ…」と思いました。しかし、さらに事情をお聞きするなかで、何とかその条件通りに売らせていただきたいと、気持ちは固まっていったのです。

お客様からの条件は2つありました。

まず一つは〈土地を分割せずに、お庭を残すこと〉。「『分割した方が売りやすい』『アパートを建てては』とは言われるんですけど。どうしても、ね」。ご夫婦はすまなそうに言いました。私はその土地を、ご夫婦と見に行くことにしました。たしかに家を二軒建てるのに十分な広さです。しかし私が一番圧倒されたのは、お庭でした。その時はまだ雪囲いがされていましたが、それでもその立派な様子は伝わってきます。ご夫婦は私に「あの木は梅。あれはカエデで、紅葉がそれは綺麗でね。こちらにはバラが咲きますし、あちらにはブドウがなりますよ」と。そして…と大きな木を指差していいました。「これが桜。毎年それはもう見事に咲いてくれます」。目を細めながらその木を眺めるご夫婦には、咲いた姿が浮かんでいるのでしょうか。私はご夫婦と共にしばし、葉もない木を眺めていました。もう一つの条件は、さらに難しいものでした。〈お庭が好きなご近所との関係も、一緒に継いでくれること〉。「桜や梅が咲くのを、ご近所さんも毎年楽しみにしてくださって。ブドウが実れば、おすそわけをしていました。花が咲けば集まり、紅葉が色づけば一緒に眺めて、ね」。 ですからお庭を壊さず、皆さんの楽しみを奪わずにいただきたい、とおっしゃるのです。最初に感じた通り、周りを思いやる素敵なご夫婦でした。私は一呼吸おき、お二人にはっきりとお返事しました。「少々お時間はかかるかもしれませんが、ご希望通りに売れるようがんばります!」

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私はすぐにこちらの土地について、
さまざまな業者へ情報を伝えました。

家は壊しても良いというお話でしたので、大きな家を探している方はもちろん、二世帯で建てようという方へもご案内するよう店舗のメンバーやお付き合いのある不動産業者にお願いしました。分割しないという条件には、業者の方からもずいぶんと驚かれたものです。しかし私は、ご夫婦のご希望通りにお売りしようと決めていました。二世帯ならばきっとニーズはあるはず。そしてご近所付き合いも、あのご夫婦が築いた人間関係ならばきっと大丈夫だろうとの思いもありました。そしてまもなく、道行く人にも目を留めていただくために、大きな看板をその土地へ掲げました。 それから数カ月が経ち、雪はすっかり溶けて春が訪れました。それまでも私は、あちこちへかけ合っていましたが、やはりなかなか色よい反応はありません。もっと時間がかかるかな…と思っていたある日。「(あの土地を)検討したい」と、一本のお電話が。私はすぐにその方へ会いに行きました。お電話をくださった方は、50代の優しそうなご夫婦。娘さんご夫婦と3人のお孫さんと、7人家族で二世帯住宅を建てるのに、土地を探しているところだったそうです。それが、たまたまドライブをしていた途中、あのお庭の見事な桜に、思わず車を停めて見入ってしまったとのこと。そしてふと、看板が目にとまったと言うのです。「お庭もきちんとお手入れされていて、とても気に入りました」と、嬉しそうに話すご夫婦へ、私はご近所の方とのお付き合いについても、包み隠さずお話しました。すると ご夫婦はニコニコしながら「ええ、ええ。喜んで。ご近所の方とそのようなお付き合いが出来るなんて、こちらこそ嬉しいです」と大きくうなずかれました。私はまさに願い通りの方だと、ホッと胸をなでおろしました。その後も話は順調に進み、無事に契約の運びとなりました。

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売主様と買主様が契約のために
初めて対面された日。

売主様は、お庭の思い出も引き継いでいただきたかったのでしょう。木や花の思い出を一つひとつお話され、買主様はニコニコと聞かれていました。「二世帯にするため家は建て直しますが、木やお花は傷めないようにしますので」との買主様のお言葉に、売主様は大変嬉しそうでした。
私は後日、買主様と一緒に、ご近所の方々へごあいさつに回りました。お庭はそのままですとお伝えすると、皆さんとても喜ばれました。そしてごあいさつを終え、会社へ戻ろうとした時。私は気がつくと、桜の木を眺めていたのです。あの日、買主様が思わず車を停めたほど、見事に咲き誇ってくれた桜の木。「…お前が新しい家族を呼んでくれたのか?」私はガラにもなく、心の中で話しかけていました。「お客様の大切な土地のお取引は、その想いも大切に受け止めて、お手伝いをする」。私はそれを信条としています。桜の木は風に枝葉を揺らし、まるで「それでいいよ」と言ってくれているようでした。

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