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2.遊休地に賃貸マンションを建設すると相続税評価額が減少する

相続税は相続時に被相続人が残した相続財産に課税されます。相続財産は時価で金額を算定します。時価は一般的に財産評価基本通達に従って計算されます。
この財産評価基本通達の土地や建物の計算では、建物は固定資産税評価額(建築費の60~70%)で評価され、また賃貸マンションなどの賃貸用の建物は、更に借家権割合を減額できるため、建築費の50%前後の評価額になります。土地は貸家建付地といわれ、評価額は相続税評価額の更地の評価から更に18%(借地権割合60%の地域)又は21%(借地権割合70%の地域)の減額になります。このように実際の建築費や土地の時価に比し賃貸用マンションやその敷地は評価が低く計算される仕組みになっています。
(「相続税の仕組みと計算」もあわせてご参照ください。)

(1)A氏の現況

【相続関係図】

相続関係図

■A氏の財産

①土地(建物は古いため評価額ゼロと仮定する)

  利用状況 面 積 1㎡当たりの評価額
甲土地

A氏の自宅の敷地

400㎡

100,000円
乙土地

青空駐車場

400㎡

400,000円
丙土地

資材置場に賃貸

1,000㎡

240,000円

②現金預金

預金 7,000万円

③有価証券

株式 8,440万円

(2)概算による財産評価

①土地

  利用状況 面 積 1㎡当たりの評価額 評 価 額
甲土地 居住用

400㎡

100,000円

(ア)10万円×400㎡=4,000万円
小規模宅地の特例

(イ)10万円×330㎡×80%=2,640万円
(特定居住用宅地等に該当する場合)

(ウ)(ア)-(イ)=1,360万円

乙土地 更 地

400㎡

400,000円

40万円×400㎡=16,000万円

丙土地 更 地

1,000㎡

240,000円

24万円×1,000㎡=24,000万円

合 計

41,360万円

②現金預金

7,000万円

③有価証券

8,440万円

1.財産合計

56,800万円

2.相続税の基礎控除

3,000万円 + 600万円 × 3人 =

4,800万円

3.課税遺産総額

56,800万円(1)- 4,800万円(2)=

52,000万円

4.相続税の総額

〈課税遺産総額を法定相続分で按分する〉

 

課税遺産総額

 

割合

 

課税遺産額

   

妻B分

52,000万円 × 1/2

26,000万円

   

長男C分

52,000万円 × 1/4

13,000万円

   

次男D分

52,000万円 × 1/4

13,000万円

   

〈法定相続人ごとに算出した相続税を合計し総額を求める〉

 

課税遺産総額

 

税率

 

控除額

 

相続税

妻B分

26,000万円 × 45%

2,700万円

9,000万円

長男C分

13,000万円 × 40%

1,700万円

3,500万円

次男D分

13,000万円 × 40%

1,700万円

3,500万円

合計            

16,000万円

5.配偶者の税額軽減

妻の相続分を1/2と想定

 

軽減額

 16,000万円(4)×1/2=

8,000万円

6.納付予定税額

 
 
 

16,000万円(4)-8,000万円(5)=

8,000万円

(3)賃貸マンションを建てた場合

■乙土地・丙土地に賃貸用のマンションを建設

①乙土地に20,000万円でマンション建設

自己資金 5,000万円

借入金 15,000万円

②丙土地に40,000万円でマンション建設

借入金 40,000万円

■マンション建設後の相続税評価額

①土地

  利用状況 面積 1㎡当たりの評価額 評価額
甲土地 居住用 400㎡ 100,000円 10万円×400㎡=4,000万円
乙土地 マンションの敷地 400㎡ 400,000円

(ア)40万円×400㎡=16,000万円

(イ)貸家建付地の評価
16,000万円×(1-0.6×0.3)(注1)13,120万円

(ウ)小規模宅地の特例

13,120万円× 200㎡

×50%(注2)3,280万円

400㎡

(エ)(イ)(ウ)9,840万円

丙土地 マンションの敷地 1,000㎡ 240,000円

(オ) 24万円×1,000㎡=24,000万円

(カ) 貸家建付地の評価
24,000万円×(1-0.6×0.3)(注1)19,680万円

合 計

33,520万円

(注1)借地権割合60%、借家権割合30%とする。

(注2)甲土地に対する小規模宅地の特例より減額が大きいため乙土地に適用。

(注3)相続開始前3年以内に新たに貸付を開始した貸付事業用の土地には一定の制限があります(→こちらをご参照ください)。

②建物

乙建物   建築価格  20,000万円    
   固定資産税評価額 12,000万円 (仮定)  
   貸家の評価減後 12,000万円 ×(1-0.3)=

8,400万円

丙建物  建築価格 40,000万円    
   固定資産税評価額 24,000万円 (仮定)  
   貸家の評価減後 24,000万円 ×(1-0.3)=

16,800万円

③現金預金 (マンション建設の自己資金に5,000万円を出資)

2,000万円

④有価証券

8,440万円

⑤借入金

▲55,000万円

1.概算による財産合計

14,160万円

2.相続税の基礎控除

3,000万円 + 600万円 × 3人 =

4,800万円

3.課税遺産総額

14.160万円(1)- 4,800万円(2)=

9,360万円

4.相続税の総額

 
 

〈課税遺産総額を法定相続分で按分する〉

 

課税遺産総額

 

割合

 

課税遺産額

   

妻B分

9,360万円  ×  1/2  = 

4,680万円

   

長男C分

9,360万円  ×  1/4  = 

2,340万円

   

次男D分

9,360万円  ×  1/4  = 

2,340万円

   

〈法定相続人ごとに算出した相続税を合計し総額を求める〉

 

課税遺産総額

 

税率

 

控除額

 

相続税

妻B分

4,680万円  ×  20%  - 

200万円

 =

736万円

長男C分

2,340万円  ×  15%  - 

50万円

 =

301万円

次男D分

2,340万円  ×  15%  - 

50万円

 =

301万円

合 計            

1,338万円

5.配偶者の税額軽減 妻の相続分を1/2と想定

軽減額

1,338万円(4)× 1/2 =

669万円

6.納付予定税額

1,338万円(4)- 669万円(5)= 

669万円

(注)この事例計算は、遊休地にマンションを建築すると相続税評価額が低減することの概算の例示です。
相続税を納税するための実際の計算は実測図その他の資料を基にした詳細な計算が必要となります。

解 説

賃貸マンション建築前のA氏の相続税評価額は5億6,800万円で、相続が発生したと仮定した相続税は8,000万円と想定されました。しかし、有効活用されていなかった更地に借入金で賃貸マンションを建築することにより、相続税評価額は1億4,160万円に減少し、相続税額も669万円に減少されると予想されます。また賃貸マンションの賃料が入ることにより、本人の生活費や相続税の支払財源を作ることもできるため有効活用としては最適なプランとなりました。
ただし、キャッシュフローや賃貸市場調査等、賃貸経営のための研究を十分にしてからの実行が必要です。

企画・発行

三井不動産リアルティ株式会社

東京都港区霞が関 3-2-5 霞が関ビルディング

https://www.mf-realty.jp/
監修

東京シティ税理士事務所

税理士 山端 康幸

https://www.tokyocity.co.jp/

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